Bitter Love〜苦くて切ない恋〜
「何かあったの?」

「さあ、何があったんでしょ」

他人事のように、あたしは言った。

本当は、あたしのせい。

でも、知らないフリをした。

芯が一瞬、こっちを見た気がした。

けどまた、元のグラス磨きをする。

「心配してるんですね、芯のこと」

あたしが言うと、中沢さんは、
「弟みたいなものだから」
と、言った。

弟、か。

中沢さんにとって、芯は弟みたいなものなんだ。

「雪ちゃんはどう思うの?

芯くんのこと」

「あたし…ですか?」

グラス磨きの手を止め、芯がこっちを見たような気がした。

「あたしは…どうでしょう。

…弟か友達、ですかね?」

「それ以上は?」

「…それ以上も以下もないです。

と言うか、恋愛の対象には入ってません」

――ガチャン。

グラスの割れる音が、店内に響いた。

「すみません、落としました」

割れたグラスを拾おうと、芯がかがみ込んだ。

何があったのだろう?
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