Bitter Love〜苦くて切ない恋〜
割れたグラスを手にし、躰を起こした芯が、
「すみません。

ここのところ、そそっかしくて」
と、笑いながら言った。

「この前もグラスを割って、マスターに怒られたばかりなんですよ」

「ケガは、なかったか?」

心配するように、中沢さんが聞く。

「大丈夫ですよ。

あーあ、また怒られちゃうなー」

笑いながら言う芯は、何だか無理してるように見えた。

何があったの。

グラスを割ったことなんて、1度もなかったじゃない。

何があったの?

「じゃあ、もう帰るよ」

飲みかけのカクテルの横に、中沢さんがお金を置いた。

中沢さんが店を出る。

彼の後を追うように、あたしもお金を置いて店を出る。

店のドアが閉まる時、一瞬だけど、芯の声が聞こえたような気がした。


店を出たあたしは、中沢さんの後を追った。

伝えなきゃ。

この気持ちを伝えなきゃ。

押さえることなんて、もう無理だった。

笑われたっていい。

バカにされたっていい。
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