主人とネコ(仮)
―2、
広くもなく、狭くもない部屋の中、ある一人の者が嘆息していた。
「もも様、お食べください」
紺青(こんじょう)の髪と瞳を持つその彼がその言葉を言うのは、これで何回目なのだろう。
「いらない」
少女はそっぽを向いている。
「食べていただかないと困ります」
「お腹空いてないから、いい」
その言葉に、また彼はため息をつく。
この方は分かりやすい方だ。
嘘だとバレないように、私と目を合わせないようにしている。
ちらりとももは彼を一瞥し、視線が絡むと慌てたようにそそくさと目をそらす。
彼女のこの行動も、これで何回目なのだろうか。
その行動が逆に嘘をついていると分かってしまうのですが……。
「嘘をついてもダメです」
そう言うと、まるで彼女は〝どうして嘘だとわかったの〟というかのような表情をした。
「顔に出やすいって言われたから、目を合わせないようにしてたのに……」
ももは胸の中で呟いているつもりだったが、それは彼にも聞こえていた。
そんなようすに、彼はまた一つ、嘆息した。