主人とネコ(仮)
食事を終え、彼は片付けをして部屋を後にしようとする。
「あの、グレイさん」
「グレイで結構です」
「あ、じゃあグレイ……。あのね、お願いがあるんだけど」
お願い?
その言葉に、彼はももを見つめる。
「なんでしょうか?」
「……あたし、閉じ込められるのは嫌なの」
「と、いいますと?」
そう言ったグレイに、ももは少し顔を歪ませる。
本当は私の言いたいこと、わかってるくせに……。
「自由に出入りできるようにしてほしい」
魔王が部屋から出て行き、従者である彼が食事を持ってくるまでの間、彼女は部屋の中をうろうろしていた。
と言っても、そこまで広いわけでもなく、すぐ終わったのだが。
『ねえ、お願い』
はあ、とグレイはまた本日何回目かのため息をつく。
「そうすれば、もも様は逃げてしまうでしょう?」
もちろん!
表情には出さないように、彼女は心の中でそう言い切る。
「ですから、自由に出入りする事は出来ません」
その言葉に、ももは悲しそうな顔をしながら俯く。
けれどグレイにそう言われてしまうのも、彼女の計算通りだった。