主人とネコ(仮)
着替え終わり、扉を2回ほどノックする。すると扉は静かに開かれた。
「お似合いです」
ミルアは軽く微笑む。
「あ、ありがとう」
やっぱり、綺麗な人だなあ。
笑わないイメージを勝手につけてたけど、笑うんだ。
そんなことを思いながら、ももは彼女の少し後ろを歩く。あ、と彼女は声を漏らした。
この道を覚えておいたら、部屋から出れた時に迷わずに行ける!
きらきらとももの瞳は輝く。そんな様子の彼女を見つめ、ミルアは口を開いた。
「もも様、失礼ですが玄関までの道のりはもも様が部屋から出る度に変わりますので、覚えても何の役にも立ちません」
「えっ? そうなの?」
驚いた表情をし、その次にももは苦笑いをする。
「私、また思ってることを口に出してた?」
「いえ……、顔にでていました」
そ、そっか、とももは言う。恥ずかしそうに、彼女は顔を俯かせた。
「もも様」
凛とした、きれいな声。
「はいっ」
ももは思わず勢いよく顔を上げる。
「っ……え、っと……」
空色の瞳が、じっと彼女を見つめていた。
な、何か私の顔についてるのかな?
微動だにしないミルアの視線に、顔が引きつっていく。