主人とネコ(仮)
「ミル……」
「もも様はなぜ、〝拾われた〟のですか?」
二人の声が、重なった。
彼女の言葉に、ももは目を見開ける。
「拾われ、た?」
私が……アイツに?
ええ、とミルアは落ち着いた声で言う。
「エル様が何かを拾って帰るのは初めてでして……。しかもそれが、まだ一六、七歳ほど人間の少女だなんて……、正直、驚きを隠せません」
「………」
ああ、ミルア(彼女)は、私のことをあまりよく思っていない。
驚きの中、頭の隅では冷静な自分がいた。
しかしそれよりも、ももの中では抑えきれない感情が渦巻いている。
私は――。
「私は、拾われてなんかいない!」
突然彼女が声を上げたことに、ミルアは少し驚いた顔をした。
「私はアイツに無理やり連れてこられたのよ!」
〝拾われた〟なんて、まるで私がそうされなければいけない状態か、自分から連れて行ってと願ったみたいな言葉じゃない。
――ああ、そうか。だからミルアは……
「そ、そうなのですか?」
私のことをよく思っていないんだ。
敬う主のもとに、突然知らない者――それも人間が、やってきたから。
だから彼女は、私のことを〝敵〟とみなしているのかもしれない。
主に害をなすものだと、思っているのかもしれない。