主人とネコ(仮)




重い瞼を、ゆっくりとあげる。ぼやけた視界に入るものは、見慣れない天井。

……ここは、どこ?

全く知らない場所だと気づき、勢いよく少女は起き上がる。

「いっ……!」

激しい痛みが頭を襲う。

そういえば……魔力使ったんだっけ。
いつもはあんなに大きな魔法使わないけど、夜だけあって魔物の数が多すぎたから、仕方ないよね。

「でもやっぱり、負担が大きすぎたなあ……」

痛む頭を抑えながら、窓の外を眺める。窓は出窓で、一人が座ってもまだ少し余裕がある大きさだった。

「……森に囲まれてる」

少し先にあるのは木々のみ。森が放つ雰囲気はどこか重く、少し不気味である。
少女の家も森の中にあるが、そことは雰囲気が全くといって違っていた。
ただ一つ同じなものは、壮大に広がる青空。

「帰りたい」

ぽつりと呟いた、その時だった。扉が小さな音を立てながら開かれる。
反射的に、彼女は扉の方に顔を向けた。

「起きたか」

少し低い、その声。

ああ、あの湖のところにいた奴だ。

直感的に少女は思う。

「………」

それにしても、あの時は暗くて分からなかったけど、この人、すごく整った顔してる。
それに―――

「―――キレイ」

無意識に、その言葉を口から溢れていた。

……片青眼(オッドアイ)なんて、初めて見た。

吸い込まれてしまいそうなほど深い、青の瞳。そして、燃え盛る炎のような、鮮やかな紅の瞳。
オッドアイが、彼の整った顔をさらに引き立てている。




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