主人とネコ(仮)
*
重い瞼を、ゆっくりとあげる。ぼやけた視界に入るものは、見慣れない天井。
……ここは、どこ?
全く知らない場所だと気づき、勢いよく少女は起き上がる。
「いっ……!」
激しい痛みが頭を襲う。
そういえば……魔力使ったんだっけ。
いつもはあんなに大きな魔法使わないけど、夜だけあって魔物の数が多すぎたから、仕方ないよね。
「でもやっぱり、負担が大きすぎたなあ……」
痛む頭を抑えながら、窓の外を眺める。窓は出窓で、一人が座ってもまだ少し余裕がある大きさだった。
「……森に囲まれてる」
少し先にあるのは木々のみ。森が放つ雰囲気はどこか重く、少し不気味である。
少女の家も森の中にあるが、そことは雰囲気が全くといって違っていた。
ただ一つ同じなものは、壮大に広がる青空。
「帰りたい」
ぽつりと呟いた、その時だった。扉が小さな音を立てながら開かれる。
反射的に、彼女は扉の方に顔を向けた。
「起きたか」
少し低い、その声。
ああ、あの湖のところにいた奴だ。
直感的に少女は思う。
「………」
それにしても、あの時は暗くて分からなかったけど、この人、すごく整った顔してる。
それに―――
「―――キレイ」
無意識に、その言葉を口から溢れていた。
……片青眼(オッドアイ)なんて、初めて見た。
吸い込まれてしまいそうなほど深い、青の瞳。そして、燃え盛る炎のような、鮮やかな紅の瞳。
オッドアイが、彼の整った顔をさらに引き立てている。