主人とネコ(仮)
――熱い。
何もない、ただ暗闇包まれた中、少女は自分の体を抱きしめながら、蹲っていた。
誰か。誰か。
この熱さから、助けて。
――――
刹那、声でなければ言葉でもない、何か不思議なものが、ももの中に流れ込んだ。
それを感じ、先程まで体中を襲っていた熱さが消えていく。
そっと、彼女は顔を上げた。
………。
桃色の髪に、栗色の瞳。けれどその瞳は、無情なもの。
〝もう一人の少女〟が、少し先からももを見つめたいた。
〝彼女〟はゆっくりと口を開ける。けれどその言葉が声となり出ることはなく、ただ口を動かしているだけだった。
しかもももにはその何かの言葉がわかったのか、彼女にそっと手を伸ばそうとする。
っ……。
刹那、鋭い痛みが胸の中を襲った。
ぼやけ、揺れる視界。遠のいていく意識。
必死に目を凝らし、ももは彼女を一瞥する。相変わらず、彼女は無情な瞳でももを見つめていた。
そして、彼女は口を動かした。
〝また会いましょう〟と。