さよならイエスタデイ【短】
最悪だ。
なんで確認しなかったんだ。
今更後悔したって、もう遅い。
慧はあたしの目の前にいるから。
「―霞」
繰り返し呼ばれる名前が、ひどく心地よかった。
「なんで避けてたワケ」
『………』
「霞」
『…黙ってよ』
その声で、あたしを呼ばないで。
泣きそうになるから。
「霞」
言うことは、聞いてもらえないみたいだ。
『あたしに…なんでかまう訳?』
イライラするの。
『いつも慧の周り囲んでる子だけに、かまえばいいじゃん』
慧が誰かと話しているのを見ると。
『なんでっ…なんであたしと…』
あたしだけのものにしたいのに。
『もう…あたしにかまわないでよっ…』
――あたしは何でこんなに、素直じゃないんだろうか。
それは、あたしが醜い独占欲のかたまりだからなんだよ――。
「嫌だ」
慧の口から放たれた言葉が信じられなかった。