さよならイエスタデイ【短】
『は……?』
訳が分からない。
なんで、なんで、なんで。
考えているうちに、
慧の姿に透明のフィルターがかかっていく。
何泣いてんの、あたし。
慧が見えなくなる――。
そう思った瞬間、あたしは慧に抱きしめられていた。
『け、慧……?』
「…一生、言うつもりなかったけど」
『は、離して…』
「…好きだよ」
――初めて耳の奥に響いたその言葉は、
とても甘美な響きだった。
『な、なにそれ…』
「なにそれ、って。
好きって言っただけじゃん」
また響いた言葉に、
心が甘く痺れる。
『…嘘だっ』
「嘘じゃない」
『嘘だっ、嘘だっ!
だって慧は――。』
言い終わらないうちに、
慧に唇を塞がれた。