さよならイエスタデイ【短】
こういうの何回も経験してるから、
慣れてるっつーの。
答えも全部一緒で――。
『あたしにそんな暇はないから』
だって、慧が好きだから。
こんな子よりも、
ずっとずっと慧だけなんだよ――。
そんなあたしに気付いてくれない慧は残酷だと思う。
…分かってる。
あたしはあの可愛い後輩みたいにはなれないこと。
慧の周りをいつも囲んでる女の子たちにもなれない。
あたしは男友達みたいな存在で、
ただの"幼なじみ"だってこと――。
分かってるけど。
誰にも慧を渡したくないんだ。
『…ねぇ』
いつものように慧と一緒の帰り道。
珍しく、あたしから話しかけてみたら、
「……」
『何驚いてんの』
「いや、霞が話しかけるなんて…。
まじ天然記念物じゃん!」
『…ばーか』
思わず頬が緩んでしまう。
慧のそんな所も好きだったりする。