さよならイエスタデイ【短】
――"霞"。
その名前は慧に呼ばれる時だけ、
生きていたのかもしれない。
――「霞先輩っ」
突然聞こえた大声にビックリする。
「先輩ー。部活中にぼーっとしてちゃダメですよ!」
『あぁ…うん。ごめんね』
「多分、練習のし過ぎですよ。
休んだらどうです?」
『いや、それはいいよ』
…動いた方が、何も考えなくて済むから。
あの日からあたしは、
あからさまに慧を避けていた。
話しかけられても、絶対無視。
部活が終わっても、
昇降口にいる慧に見つからないように、
あらかじめ靴を持ち出して、
裏口から逃げているほどだ。
会ったらきっと、泣いてしまう。
気持ちが溢れてしまうから――。