さよならイエスタデイ【短】
「お疲れ様でーす」
『お疲れー』
更衣室で先に帰っていく後輩を見送る。
窓から外を見ると、
一面の暗闇。
まだ待ってるのかな、慧。
"――俺、待つの好きだよ"
それは、あたしが幼なじみだから、
気を使っているんでしょ?
…嘘はつかなくていいのに。
――コンコン。
静寂の中で響いたノックの音に、一瞬驚いた。
あたし以外、誰も残ってないからな…。
でも、冷静に考えてみれば、
誰かが忘れ物をしたのかもしれない。
そう思って、足早にドアに近付く。
『どうし……』
言いかけた言葉は、
暗闇に消えてしまった。
すぐに思考を切りかえ、
開けたドアを全速力で閉じる。
―閉じようとしたけど。
「待てよ」
とっさに足を挟まれていたことに気付いた時には、遅かった。
「―…霞」
『け、慧…』
不覚にも、久しぶりに
慧の視界に捕らえられた時、
胸が高鳴るのを感じた。