『naturally』
「こうして今わたしは姫の親兵をさせていただいています。ご満足されましたか?」
終始淡々と話されていったシェナの生い立ち。
父の為に女であることを封じたシェナが今ここにあるのだ。
「じゃあおまえは男なのか?」
「いえ。わたしは男でも女でもありません」
自分でも自分をどう表して良いのかがわからない。
リューシュからの問いかけに、シェナの目は寂しげに足下へ伏せられた。
「おまえの父上に感謝だな」
「……えっ?」
そんなシェナに気づいたのか、リューシュが発した一言に俯いていたシェナの顔が上がる。
「俺は舞踏会なんかより剣術が好きだから。どんなに着飾った女よりも、剣を振るうおまえは魅力的な女に見える」
「っ!」
無自覚に吐かれたリューシュの言葉に一人戸惑うシェナは、真っ赤に染まった頬を二~三度撫でた。
そんなことなど気づかず、言った本人は満ち足りた笑顔でシェナを見つめている。
……無自覚の人間ほど強いものもない。
恥ずかしさに耐えられなくなったシェナが、未だに赤く染まったままの頬を隠すように再び下を向いた。