『naturally』
ナッシュに呼び出されていたリューシュが部屋を訪ねてたのはすっかり舞踏会も終わり、城が暗闇と静寂に包まれた夜更け頃だった。



「確信犯だな」

「えっ?」

「舞踏会が終わった頃に来やがって」


ナッシュがわざわざ侍女を走らせてまでリューシュを呼び出したというのに、あの後リューシュは散々渋って舞踏会が終わるまで自室に引きこもっていたのだった。


「やっぱり舞踏会に出すつもりの呼び出しだったんだな……」

「当たり前だろ。おまえも二十歳になるんだからな。婚約者の一人くらい父上や母上に見せてやらないといけない歳だろ。いい加減」


何故かナッシュと一緒に部屋で待ちかまえていたセルシュがすかさず口を挟む。

三人の両親。

つまりはマーセル国の国王と王妃は、王妃の体調不良を理由に一年程前から半隠居状態で郊外の別宅に移り住んでいたのだった。


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