『naturally』
「そうでしたか。では衣装部屋の方を探してみます。失礼」
淡々とした口調と、如何にも外面といった作り笑顔でミリザ姫にこう告げると、リューシュはさっさと身を翻して部屋を後にした。
マーセル城内にある衣装部屋。
ここにはマーセル城内にある洋服全てが収められている。
自分の衣服に関しては侍女に任せきりのリューシュが、ここに来ることは滅多にない。
ゆっくりと扉を開けた部屋にはいっぱいに洋服が吊されており、広い部屋だが視界は非常に狭かった。
種類別に並べられた洋服の間にシェナの姿を探して歩く。
「おっ。シェ……」
ちょうど山のようにドレスが吊されたあたりをのぞいたときだった。
シェナの姿を見つけ、彼女の名前を呼ぼうとしたリューシュが思わず口を閉ざした。
そこにあったのは、一つ一つのドレスを手にしてはじっくり見つめるシェナの姿だった。
シェナは憧れのものに心惹かれる子どものような、優しくも羨ましげな眼差しを浮かべている。