『naturally』
「ありがとうシェナ。おかげで今日の舞踏会も無事出られるわ」
舞踏会会場に向かう道中。
破れてしまったショールの代わりをマーセル城内の衣装部屋から拝借し、無事準備を整えたミリザ姫が斜め後ろを歩くシェナに礼を述べた。
そんな上機嫌なミリザ姫にシェナが礼を返しながら頭を下げる。
「では、お楽しみになってください」
「えぇ。シェナ。ここは平和だわ。あなたも最後の日くらい自由にしていて頂戴」
煌びやかな衣装を纏った女性たちが行き来する舞踏会会場の入り口で、自分を見送るシェナにミリザ姫が声をかけた。
「ありがとうございます」
深々と頭を下げるシェナに満足したようにミリザ姫は、煌びやかな会場の光の中へ消えていった。
ここは他国の城内。
自由にしろと言われて出来ることなど、ただの親兵である自分にはほとんどない。
それでも、姫からの好意を無碍にすることも出来ず、自分に与えられている部屋に戻ろうとした時だった。
「ちょっと付き合え」
「リューシュ様っ」