『naturally』
いつの間にか目の前に現れていたリューシュが、有無も言わさず半ば引っ張るようにしてシェナの手を引いて行く。


「どちらに?」

「ここだ」

「ここ?」


そうしてシェナが案内されたのは、城の奥に並ぶ部屋の一室だった。

ドアノブに施されたマーセル国王家の紋章が、ただの部屋じゃないことを明らかにしている。


「俺の部屋。ほら、入れ」

「えっ! リュ、リューシュ様っ?」


サラリと答えられた部屋の正体に、慌てふためくシェナが身を翻そうとする。


それにも構わずシェナは強引にリューシュに背中を押され、中へと押し込まれていく。


「な、何をされるんですかっ」

「怒るなって。気に入らないか?」

「えっ……これ……は?」


無理矢理部屋に入れられ、強引なリューシュに怒り露わなシェナをなだめるように指差した先。

そこに並べられたドレスの一式にシェナの怒りなど吹き飛び、驚きで目を丸くさせた。


「おまえに似合うと思った色を選んだつもり」

「どういうことですか?」
< 27 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop