『naturally』
「暇なんだろ? 一戦交えようや」
こう言って細やかな装飾が施された鞘から剣を抜き、切っ先をシェナに向ける。
さっきから失礼極まりない態度の男に、シェナの眼光が一層厳しくなる。
「何者だ?」
「……リューシュ。おまえは?」
「シェナ」
「お互いの名前知ってりゃあ充分だろ。剣、抜けよ」
近づいてきた男をよく見れば上等な着物を身につけており、手にした剣も見るからに上物だった。
どうやらこう見えても貴族の人間らしい。
下手に断り、機嫌を損ねてはいけないと判断したシェナは、リューシュに従い剣を構えた。
「んじゃあ、行かせてもらうぜっ」
待ってましたと言わんばかりに、リューシュは持っていた剣を振りかぶり、シェナに斬りかかった。
身を屈め、それを交わしながら切っ先で弾き返す。
力で押してくるリューシュを技で交わすシェナ。
「おまえ、見た目以上だな。気に入った!」
交わった剣越しにシェナを見据えるリューシュの目がシェナを捕らえて離さない。
あまりに楽しそうなリューシュに、シェナの調子も段々乗せられてくる。
お互いの気分も高まり、勝負はこれからという時だった。