『naturally』

「暇なんだろ? 一戦交えようや」


こう言って細やかな装飾が施された鞘から剣を抜き、切っ先をシェナに向ける。


さっきから失礼極まりない態度の男に、シェナの眼光が一層厳しくなる。


「何者だ?」

「……リューシュ。おまえは?」

「シェナ」

「お互いの名前知ってりゃあ充分だろ。剣、抜けよ」


近づいてきた男をよく見れば上等な着物を身につけており、手にした剣も見るからに上物だった。



どうやらこう見えても貴族の人間らしい。


下手に断り、機嫌を損ねてはいけないと判断したシェナは、リューシュに従い剣を構えた。



「んじゃあ、行かせてもらうぜっ」


待ってましたと言わんばかりに、リューシュは持っていた剣を振りかぶり、シェナに斬りかかった。


身を屈め、それを交わしながら切っ先で弾き返す。


力で押してくるリューシュを技で交わすシェナ。



「おまえ、見た目以上だな。気に入った!」


交わった剣越しにシェナを見据えるリューシュの目がシェナを捕らえて離さない。


あまりに楽しそうなリューシュに、シェナの調子も段々乗せられてくる。


お互いの気分も高まり、勝負はこれからという時だった。

< 3 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop