『naturally』
Ⅵ
「姫君の時間はしまいか?」
女嫌いとして有名なリューシュが、舞踏会に姿を現したことに加えて、見たこともない姫君を連れている。
会場は一気に色めき立った。
それにも構わず兄たちとの約束通り会場内を一周したリューシュの手には、ずっとシェナだけがエスコートされていた。
それが例え、好奇の目にさらされているのだとしても、リューシュは満足していただろう。
その視線の先にシェナが映ることが嬉しかった。
「……夢、みたいでした。こんな綺麗なドレスを着て、一国の王子にエスコートされるなんて」
「…………」
こう言って、愛おしそうにドレスを見つめるシェナの顔はすっかり女性のものだ。
「感謝しています。わたしの密やかな願いに気付いてくださって……っ」
「……もう少しだけ、俺の姫君で居ろよ」