『naturally』
綺麗に着飾ったドレスがはだけ、垣間見えた細く白い体が小さく震えている。

こんなとき、どうしてやれば目の前で不安げに瞳を揺らす愛しい人は、安心出来るのだろうか……。

「……大丈夫か?」


こんなことならば器用な兄たちのように、たしなむ程度に女性を相手しておくべきだっただろうか。

無知な自分に心底後悔した。

リューシュは小さく震えるシェナの顔を窺うように覗き込む。

「きつかったら言えよ? 俺……わかんねぇから」


身を離そうと後ろに引いたリューシュの長い指にシェナの細い指が絡まる。

はっとしたように見つめ返した瞳の中で、シェナが嬉しそうにはにかむ。

「幸せです」

「……えっ」

「生まれて来て良かった……。あなたに出逢えて、あなたを好きになって良かった」


こう言って華奢な体を寄せるシェナをぐっと腕に抱きすくめた。

さっき頭を掠めた後悔は取り消そう。

初めて抱きしめる女性が、自分が初めて愛した女性で良かった。


例え明日には、離れ離れの身の上だとしても。

今宵の想いは永遠に消えることは無いはずだから。

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