『naturally』
「リューシュ様っ」
「迎えに来たぞ」
驚くシェナの手を取り、引き寄せるリューシュは満面の笑みを浮かべている。
「えっ?」
「一夜の相手って割り切れるほど俺は大人じゃないんでな」
「でも」
リューシュの胸元から必死に顔を上げ、その目を見つめるシェナに、
「おまえを俺に渡す代わりにマーセルとクロチェが国交する。兄貴の代わりに俺がクロチェに出した提案だ」
「じゃあ……」
「おまえの心は俺のもんなんだろ? 永遠に」
唇を寄せたリューシュは額にそっとキスを落とした。
「だから俺も誓う。一生をかけておまえを幸せにし続ける。女としてなっ」
「女……として」
自分一人の為に国を懸けてしまう。
他人から見れば呆れてしまいそうな程のリューシュの真っ直ぐで大きな想いに、シェナの頭も気持ちも未だに追い付いていない。
「それになぁ、新しい剣術の師も見つかった」
「剣術の?」
「……おまえの師でもあるはずだ」
「っ! まさかっ」
さっきよりもっと驚いた顔をしたシェナが口に手を当て、リューシュを見つめたまま呆然と固まっている。