『naturally』

「俺についてくれば会えるぜ? なんてズルいな。言い方」


こう言ってイタズラっぽくリューシュは笑う。


次々に湧き出る感情で、シェナの瞳に涙が滲んだ。


「ズルい、です……ホント」

「居ても立ってもいられなかったんだ。おまえのこと考えたら」


次々に溢れ出す涙を指で掬い、困ったように笑ったリューシュがシェナの頬に手を添える。


「傍に居て欲しいし、傍に居たい。それから、もっと幸せにしてあげたい。そんなこと考えてたらこうなった」


愛おしそうにシェナの頬に触れ、落ちてくる雫をまた指で払っていく。


「それがズルいです……。わたしは絶対断れない。 例え親兵としてでも、あなたの傍に居たいっ」


「だから親兵じゃなくて、女としてだって言ってるだろ。俺が愛するただ一人の女として、だ」




どちらともなく抱き合い、軽くも長いキスを交わす。


遠くからは状況が全くわからない門番たちが二人を驚いたように見ているが、そんなことは関係ない。



マーセル国との国交の喜びと共に、姫付きの女親衛隊と王子との恋の噂が囁かれるのは、これから数日後のことだった。



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