『naturally』
「クロチェでの罪はマーセルでの罪とは限らない」
「えっ?」
「アイツの太刀筋は控え目なのにしなやかで綺麗だ」
きっと師が良かったのでしょう。
付け加えたリューシュにシェナの事情を知って尚、自分に頭を下げたこの王子への疑問が膨らんでいく。
「ドレスに着替えた姿も綺麗で、俺はシェナに二度惚れた。アイツしかこの腕に抱きたくないっ」
「……シェナの事情を知って下さった上での優しいお言葉、痛み入ります。しかし、例えそれが側室であっても面白半分に手を出して良い人間ではありません。それに」
国外追放された父を持ち、ミリザ姫のおかげとは言え自身もまた、国外追放を言い渡された身の上。
そんな人間を王家などに嫁がせては、またあの時のような悲劇を繰り返してしまう。
「私はこれ以上……シェナに辛い思いをさせたくはない」
死んだ弟の代わり。
自分を偽り続けた優しさが、皮肉にも一家離散を引き起こした。
それらを背負って生きていくシェナにはせめて、慎ましくも小さな幸せを手に入れて欲しかった。
「んなことさせないっ。俺が生涯をかけて愛します! 死ぬまで大切にしますっ!」
「王子……」