『naturally』
情熱的なリューシュの言葉に、閉ざしていた心が救いを求める。
ずっとシェナに自分を偽らせてきた罪。
幸せという感情から遠ざけてしまった。
それらをずっと悔やんで来た自分とシェナを、リューシュならば救ってくれる。
「わかりました。シェナのことは王子に託します。……ずっとこの不甲斐ない父の為に自分を犠牲にしてくれた優しい娘です。どうか幸せにしてやってください」
自分が与えてやれなかった幸せを、リューシュなら与えてくれるだろう。
そう思った父が床に膝を付き、深く深く頭を下げた。
「だったら、見守っていてください。シェナが笑っていられるように」
ゆっくりと上げた顔の前には、跪いたリューシュがじっと自分を見据えていた。
「もう一つの願いです。俺の剣の師になってください」
そうすれば、昔の罪などに縛られることなくシェナを近くで見守っていられる。
それに、
「息子に剣術を教える夢、俺で良ければ叶えさせてくださいっ」
シェナが自分自身を犠牲にして守ってきたものを、共に守っていけることがリューシュには嬉しい。
溢れる涙でしっかりと頷いた父に、リューシュは満面の笑みを浮かべた。