『naturally』
翌日。


舞踏会の支度に勤しむミリザ姫の部屋の前で、支度を待つシェナに思いがけない声がかかった。


「警備なら配置してるんだ。無用だろ」

「リ、リューシュ様。昨日は知らずとはいえご無礼を……」

「ご無礼? それ言うならいきなり一戦申し出た俺の方が無礼だろっ」

「しかし……」

「王子つったって歳なんてお前と変わんないくらいだしな。それよりも俺は昨日の続きがしたいんだよっ。 付き合え」


こう言って屈託ない笑顔で笑うリューシュに、シェナは戸惑いを隠せない。


一国の王子とわかった以上、易々と剣を向けることなど一介の親兵である自分には出来ない。


躊躇うシェナに構わず、リューシュは勝手にミリザ姫のいる部屋のドアをノックし始めた。


「リューシュ様っ!」

「様ってやめろ。気持ち悪い」

「しかしっ」


扉の前でお互い食い下がる二人の前に、

「……リューシュ様っ!」


ノックされたドアから支度中のミリザ姫が顔を出した。


呼んだのはシェナだとすっかり油断していたミリザ姫が、突然視界に飛び込んできた第三王子に慌てて一礼をしてみせた。


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