『naturally』
「悪いけど、暫くコイツ借りさせていただきます。護衛が必要なら代わりの奴を呼びますが?」
一礼する姫を特に気にすることもなく、リューシュが淡々と自分の要求をミリザ姫に伝える。
思いがけない申し出に驚いたように縮こまるシェナとリューシュを、ミリザ姫は怪訝そうに見比べている。
「構いませんが……シェナにどのようなご用が?」
「男同士の戯れ、ですよ」
「男同士の戯れ……?」
「剣術の相手をしてもらうだけです。いけませんか?」
「……シェナが望むのなら」
傍らでミリザ姫とリューシュのやりとりを黙って聞いていたシェナにミリザ姫が答えを委ねる。
慌てて断ろうとしたシェナの口を一足早くリューシュが片手で塞いだ。
「コイツなら了承してます。では、暫くお借りしますよ」
シェナに選択権などなく、こうして半ば強引にリューシュと再戦をせざるを得なくなってしまったのだった。
「何故そんなに剣術を?」
自分より一歩先を早足で進んでいくリューシュの背中にシェナが問いかける。
「……俺の剣術の師匠が、病気療養で急に隠居しちまってな……」