『naturally』
「病気?」
「……痛風だ。やっと互角に戦えるようになってきたっていうのに……」
「はぁ……」
「城の奴は王子相手に剣が振れるかって相手してくんないし……」
「……拗ねてるんですね」
「……ハッキリ言うなっ」
まるで子どものようなリューシュの口振りに、思わずシェナは口から笑い声を零した。
柔らかくなったシェナの表情を、リューシュが振り返り見つめている。
「そんな表情したら……女みたいなだな。おまえ」
「えっ?」
「剣持ってるときはやったら鋭いくせに」
「……そんなこっ」
「っと! だいじょ……」
何に動揺したのか慌てて否定しようとしたシェナが躓いた勢いで体勢を崩してしまった。
とっさに手を伸ばしたリューシュの体に掴まった瞬間、
「っ!」
「……おまえ」
何やら言いたげにシェナを見つめるリューシュの腕を突き飛ばし、
「し、失礼しますっ」
そのまま来た道を駆け足で引き返して行ってしまったのだった。
一人取り残されたリューシュは、シェナを支えたままの体勢で完全に固まってしまっている。
「まさか……」
腕に残るシェナの感触に、リューシュの胸には小さな疑問がよぎり始めていた。