短小説
地図を広げて
地図を広げて君の家へ向かうよ。
君はイジワルだから…君の家をちゃんとは教えてくれない。
「うち、ここらへんだから2時に来てね」
って地図を渡された。
「え?僕一人で?」
「うん、私実家で待ってるからね」
ねって可愛い顔されても…。
「で、どこだって?」
「ここらへん」
君の指は一ヵ所を指さず、丸くなぞる。
範囲が広い。
「…どこ?」
「だから、ここらへん」
適当に丸くなぞるから…範囲が広くなったり、狭くなったりしている。
「頑張ってね!!千夏のために」
千夏とは彼女のこと。
よし、頑張るぞ!!
大好きな君の家へ、地図を広げて行くよ。
「って、どこ~~~~~」
さまよった。
田舎道をスーツで歩き…、無謀だ!!
「ちょっと時間過ぎてるよ」
「ごめんなさい、今畑の真ん中です」
泪が溢れて、言葉がつまる。
「千夏ちゃん家がわかんな~い」
小さな子供に戻ってしまった僕。
「もしもし?千夏ちゃん?」
ツーツーツー、電話は切られた。
地図を見てもわからない。
途方に暮れた…。
けど、地図を見てここで止まっていても君のところには行けない。
歩きだした。