短小説
「ユキ!!」
ハッとした。
僕はあなたに呼ばれたのかと思った。
あなたと兄さんの方を見る。
リビングでイチャつく二人。
キッチンで夕飯を食べる僕と父さんと母さん。
父さんは二人を気にしつつも新聞を読む。
母さんは動くたびに二人をチラチラ見て、気にしすぎだ。
僕は見ないようにしてた。
一度見たら見すぎてしまう。
それでこの前兄さんに飛び蹴りを食らった。
けど、今は僕の名前を呼ばれたから見てしまった。
二人は僕に背を向け、外をながめていた。
冬の寒い日、白い雪が降ってきたようだ。
「俺じゃね~か」
一人つぶやいた。
「当たり前だ」
一張羅のセーターを着た父さんが言う。