短小説
おもむろに僕の手をにぎる。
「私、どうしたらいいかな?」
ドキドキした胸、頭は考えてくれなくなった。
悠さんはどういうつもりなのだろう?
「どうしたらって…何をですか?」
もう自分ではお手上げだ。
悠さんは困ったような笑顔をした。
解かっている、悠さんが『どうか』するという意味。
「…兄さんのことですよね?」
小さくうなづく。
「兄さんなんて…」
「悠!!!」
兄さんが追ってきた。
もう悠さんは僕が見えていない。
「ごめん、俺は悠が…悠だけが好きだよ」
どうして兄さんはこんなにも素直に気持ちを伝えられるのだろう?
どうして悠さんは泪を流して嬉しそうなのだろう?
どうして僕は二人をこんなにも近くで恨めしく見ているのだろう?
二人は人目を気にすることなく抱き合った。
それを立ち尽くして見ていた。
靴を履かずに出てしまったせいで、僕は足が冷たくって仕方なかった。