喫茶ノムラへいらっしゃい!
家に帰ってカバンの中を見ると、井上の取材ノートが入っていた。

間違って持って帰ってきちゃった。

パラパラとページをめくると、今まで井上と取材してきた記憶が蘇る。

そして、私は1番最後に書かれたページに来ると、手を止めた。

井上が書いたメモが目に入る。

見ているうちに、目に涙がたまってきた。

私なんかのどこがいいんだろう。

私はきっと中までチョコレートなのに。

それも、とびっきりのビター。



そこへ、ノックの音が聞こえた。

「お姉ちゃん、入ってもいい?」

「いいよ。」

急いで涙を拭う。

灯吏に涙は見られたくない。

「お姉ちゃん、友達の告白、手伝おうと思ってるんだけど、なんかいい方法、知らない?」

なんてタイミングだ。

「あっ、じゃあ、喫茶ノムラのウワサは知ってる?喫茶ノムラのチョコレートで告白すると、成功するんだって。」

「へぇ、そうなんだ。明日、教えてあげよ。ありがと!」

灯吏は嬉しそうに笑って私の部屋から半分体を出した。

「あっ、そだ。お姉ちゃん、素直になるのって大事だと思うよ。じゃ。」

それだけ言うと、灯吏はドアを閉めた。

なんか気づいてんの?

ふと、机の上に視線を落とすと、井上の取材ノートが開かれたままになっていた。
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