喫茶ノムラへいらっしゃい!
お店を閉めた後、リビングでくつろいでいると、お母さんが話しかけてきた。

「チョコ、ウチの店が女の子たちの間でウワサになってるらしいけど、知ってる?」

「ううん、聞いたことないよ?」

「なんか、ウチのチョコでバレンタインに告白すると成功する、って言われてるらしいけど。」

「そうなの?初めて聞いた。ってか、ものすごく紛らわしいウワサだね、それ。」

「なんで?」

「チョコが私かチョコレートかわかんない。もし私だったら、どんな色女?って感じ。」

私の言葉にお母さんは爆笑している。

そんなに笑わなくてもいいのに。

「それはないわ。チョコのこと見たって、誰も色女だとは思わないって!」

お母さんは笑い続ける。

元はと言えば、お母さんがこんな紛らわしい名前を付けたんでしょ!

私の本当の名前は“千世子”だけど、みんな“チョコ”って私のことを呼ぶ。

これは、完全にお菓子好きのお母さんの影響だ。

だって、弟の名前は“恵紀”だし。

チョコとケーキなんて、ねぇ。

とりあえず、ウチが和菓子屋さんじゃなくてよかった。

和菓子屋さんだったら、私絶対“あんこ”になってたよ…。
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