喫茶ノムラへいらっしゃい!
次の日から、私の研究の日々は続いた。

お母さんに頼んで、少しチョコレートを分けてもらい、チョコ特製チョコレートの試作品をいくつも作った。

私がお菓子作りに目覚めたと勘違いしたお父さんは、ものすごく喜んでいた。

ごめんね、お父さん。

これは、加藤さんのためだよ。

喫茶ノムラのためじゃない。


真相を知ってるお母さんは、私が何を作るのかばかり気にしていた。

絶対に教えないけどね!

恵紀には、何度か味見をしてもらった。

ココアの新しい作り方を開発中だと言ったら、恵紀はあっさり信じた。

単純なところがお父さんそっくり。



そして、バレンタインデー前日、家族の無意識全面バックアップのもと、チョコ特製チョコレートはついに完成した。

白いカップに注がれたそれは、見た目は普通のココアだ。

だけど

その中には、私の喫茶店の娘としての知識とプライド、それから、加藤さんへの思いがたくさん詰まっている。
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