喫茶ノムラへいらっしゃい!
7時を過ぎても、客足が一向に減る様子はない。

と言うか、減るどころか、逆に増えている感じもする。

私は、次から次にやってくるお客さんに追われていた。



気がつくと、もう加藤さんが来ていた。

一番端っこのカウンター席に座って、文庫本を読んでる。

私は恵紀にレジを任せ、加藤さんのもとに向かった。

「いらっしゃいませ。ごめんなさい、今日、お客さん多くて。」

「いつもと違って賑やかだね。」

「落ち着かないでしょ?」

「そんなことないよ。たまには、こういう喫茶ノムラもいいんじゃない?俺、好きだよ。」

自分に向けられた言葉じゃないとわかっていても、好きだ、とか言われると照れてしまう。

「えっと、注文しました?」

「まだだよ。」

「日替わり、でいいですよね?」

「うん、よろしく。」

「今日、もしかしたら、ちょっとお待たせするかもしれません。お母さん、チョコレートにてんてこ舞いで…」

「大丈夫。待ってるから。」

加藤さんが柔らかい笑顔で言った。
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