喫茶ノムラへいらっしゃい!
チョコレートを細かく刻んで湯せんで溶かす。

ゆっくり、ゆっくりかき混ぜながら。

チョコレートに私の思いも一緒に溶かし込む。

加藤さんは大人だから、ビターチョコを使う。

だけど、私の気持ちで甘い甘いチョコレートになってるかもしれない。

大好き、大好き、大好き。

そう思いながら、くるくるかき混ぜる。

大好き、大好き、大好き。

少しずつホットミルクを加えながら、のばしていく。

大好き、大好き、大好き。

最後に少しだけブランデーで香り付けをする。

私の気持ちがたっぷり溶け込んだホットチョコレート。

私の気持ちは加藤さんに届くだろうか。

カップに移して、加藤さんのもとに持って行く。


「加藤さん、今日は食後のコーヒーじゃないんです。」

私の言葉に加藤さんが顔を上げる。

「コーヒー、なくなったの?」

「いえ、なくなってはないんですけど…。私が作ってみました、ホットチョコレート。ほら、今日、バレンタインだから。」

「チョコちゃんも作れるんだ。楽しみだな。」

加藤さんがにっこり笑って言った。

「作れますよ、喫茶店の娘だもん。」

そう言って、加藤さんの前にカップを置く。

コースターの下に、昨日書いた手紙を置いた。
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