喫茶ノムラへいらっしゃい!
喫茶ノムラでバイトし始めて半年経った頃、今のマスターである悟さんと私は付き合い始めた。

そうすると、喫茶ノムラの内部事情が私にも見えてくるようになった。

本当は、マスターも悟さんも、コーヒー以外のメニューも喫茶ノムラで作って出したいと思っていること。

開店してすぐの頃は、マスターの奥さんが料理担当だったけど、今は体調を崩していてお店に出てこれないこと。

奥さんの料理じゃなくなって、お客さんの数がわずかだけど減ってしまったこと。



ある日、悟さんは私の目をじっと見つめて言った。

「母さんの体調が戻るまでの少しの間でいいから、喫茶ノムラの料理を作ってくれないかな?」

「それって…」

私は、結婚?、という言葉を飲み込んだ。

少しの間って言ったじゃない。

なに考えてんだ、私。

「料理は母さんが教えてくれると思うから。」

そう言うと、悟さんは店の奥にある家に私を案内した。
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