* 唯一無二 * ☆最初で最後の想い☆
そんな事を考えていると
信号が赤に変わる。


家まであともう少しなのに…。


電車が着いた所だったのか
たくさんの人達が足早に俺
の車の前を通って行く。


もうすぐ信号が青に変わり
そうな時だった。


ゆっくりと…でも必死に
信号を渡ろうとしている
男が居た。


少し身体が左側に傾いていて
右手には有名なケーキ屋の紙袋
を持っている。


「岳……。」


あの日以来.岳を見るのは
初めてだった。


必死になって信号を渡り切る岳に
傲慢でプライドの高い姿は
無かった。


プッープッー!!


後ろの車に急かされて俺は
車を発車させる。


見たくなかった…。


会いたくなかったのに…。


俺は先を急いで家の前で
車を止めた。


お袋に会っておめでとうと
と言ってやりたかったけど
そんな時間は無かった。


グズグズしていると岳が
帰って来る。


俺は昨日買ったプレゼントを
玄関の前に置くと家を後にした。


さっきからずっと岳の姿が
頭から離れない。


婆ちゃんが真面目にリハビリに
通い出したと言っていたが俺に
とって岳のあの姿は衝撃的
だった。
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