星空とミルクティー
「そろそろ店開けるよー?」
ガチャリというドアの音で、ハッと我に返る。
カウンターの奥の扉の向こう、
小さな厨房から渉が出てきて、あたしたちの間の妙な空気は一瞬にして薄れた。
「おー」と、笑いながら返した蛍吾くんは、先程までの表情を全く感じさせない。
この子のすごいところは、こういうところ。
まだ18歳なのに、表情を隠すのが上手。
そんな彼に、悲しそうな顔をさせてしまった。
少なくとも2回。
あの日 手を振り払った時と、さっき。
表のドアにかかった札を『open』に変える渉の後ろ姿を見ながら、あたしは小さくため息をついた。