星空とミルクティー


「…よし、終わろっか。」


いつの間にか閉店時間が来て、本日最後のお客さんを見送った後、渉がドアにかかった札を『close』に変える。

1日の間に来たお客さんの数は、いつもと変わらなかったけれど、なぜだか とても疲れていた。


「やっぱり父さんたちがいないと疲れるな。」


カウンターの1番端の席に座った渉が呟く。

――確かに そうだ。

伯父さんと伯母さんの存在は、大きい。

加えて、普段は閉店より前にあがらせてもらうあたしは、勤務時間的にもいつもより長かった。

けれど、やっぱり蛍吾くんとの微妙な距離感に、神経をすり減らしたことも大きな要因だったように思う。




カウンターの内側にいたあたしは、ちょうど渉の目の前に赤い椅子を運び、静かに腰掛けた。


「茜ごめんなー…疲れたろ?」

「大丈夫だよ。伯父さんと伯母さんのためだもん。」

「あー…兄貴が父親になったって、まだ信じらんねぇよ。」


渉の言葉に笑いながら、ちょうど1年前に会った従兄弟の顔を思い浮かべる。

渉とは9つ離れた充兄は、
実の弟である渉同様に、従姉妹のあたしを可愛がってくれた。

北海道の大学に行くことが決まったときは、2人で泣いたのを覚えている。

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