星空とミルクティー


…今思えば、あたしの初恋は充兄だったのかもしれない。

もちろん、昔の話だし、充兄そっくりな渉に恋心を抱くこともないけど。

それに、渉には恋人もいるのだ。
彼女のことを聞くと幸せそうな顔をする従兄弟が、素直にうらやましいと思う。



「はい。」


ボーっと考えていると、コトリという音とともにカップが置かれた。

渉の前にはコーヒー。
あたしの前にはミルクティー。

最後に自分のカップを置いた蛍吾くんは、そのままあたしの隣に腰をおろす。


「さんきゅー。」

「おー。」


あたしも、言わなきゃ。


「あ、りがと。」


隣を見ずに発した言葉。
けれど、視界の端には、うれしそうに顔を綻ばせた蛍吾くんが映って。

一瞬、どきりとした。

あたしが発した たった一言に一喜一憂して、昼間みたいな悲しい顔したり、さっきみたいにうれしそうな顔したりする。

これが、恋なのだろうか。
そんな蛍吾くんの気持ちを信じきることができないでいるあたしは、


(最低だな…)



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