星空とミルクティー
10年以上経って、俺のところに来たのは、再婚相手の男が既に床に臥せてしまったことが大きく関係していた。
名家と呼ばれるその家は、『名前』が途絶えることを恐れたのだ。
分家の者を養子に取ることも考えたらしいが、互いの仲が昔から険悪だったことから、白紙に戻された。
そこで出された苦肉の策が、俺。
『血』が絶えることが避けられないならば、せめて『名前』だけでも、と。
―馬鹿らしいと思った。
―嫌悪という感情しか浮かばなかった。
けれど、
俺が跡をつぐことを受け入れれば、俺が一人前になるまでにかかる金はもちろん、祖父母の生活も保証すると、女は言った。
2人は何も言わなかったが、俺の教育費や生活費は、年老いた2人にとって大きな負担になる。
当時、高校受験を控えていた俺は、ちょうどそのことに頭を悩ませていた。
『…わかった。』
息子を捨て、夫を捨てた女も、
その女が嫁いだ家も、
俺にとってはどうでもいい。
けれど、祖父母にこれ以上負担がかからないと言うならば、その要求を飲む価値はあると思った。