ねらわれ体質
兄は「あっ」という顔をして私を見た。
そしてにこっと笑う。
「大丈夫! 美貴ちゃんお嬢様だから俺が美貴ちゃん家でお世話になるの。だから真花はここに住んでていいんだよ」
「言われなくてもそのつもりだけど」
「……寂しいだろうけど、これも真花が大人になるため、自立するためだ」
「寂しくないです嬉しいです」
「照れるなよー」
あはは、と笑いながら兄は既に荷造りされた鞄を手にした。
い、いつの間に……。
目を見張る私をよそに、兄は風のように去っていった。
私はひとり唖然とする。
何なの、いきなり。
ていうか私これからひとり暮らし?
いや、別にいいっていうかむしろちょっと嬉しいけど、何だこれ。
混乱しながらも、お腹が空いた私は冷蔵庫の中を見てみた。
そしてまた唖然とする。
ろ、ろくなものがない……!
今まで買い出し等は兄、他の家事は私、と分担して生活してきたため冷蔵庫の中がすっからかんという状況に私は頭を悩ませた。
冷凍食品すらないなんて。
あんにゃろう浮かれて私の食のことなんか頭の隅にもなかったんだな……。
そう考えているうちにもお腹が鳴る。
空腹には勝てない。
そう考えた私は、至極憂鬱な気持ちを抱えたまま財布と携帯を手に家を出た。
学校からの帰り道でさえ不審者に追いかけられるような毎日なのに、夜に出歩いて狙われないはずがない。
案の定、昨晩私は変態に追いかけられた。
しかもこれからひとり暮らしの私には、こんな機会がさらに増えるということなの……?
変質者を撒いて家に駆け込んだ私は、息を切らしながらそう考えた。
もういやだ、こんな変な体質。