‐白雪姫と悪魔なアイツ‐
ひとまず、寒そうにしている姿が、あ
まりにも惨めに見えて、自分の愛用し
ている白いマフラーとミトンを取り出
すと、あたしはスウェットの上からダ
ウンを羽織り、家を飛び出した。
出際にリビングを見たけど、もうお母
さんは仕事へ行ったんだろう。
バタンと大きな音を立てて扉を開くと
彼は驚いたような表情を見せて、また
優しく微笑んだ。
しゃがみ込む彼の目の前に、あたしも
同じようにしゃがみ込んで彼に持って
きたマフラーとミトンを差し出す。
だけどまったくそれを受け取らない彼
に、あたしは無理矢理マフラーを巻き
ミトンをはめさせると、素直に彼はマ
フラーに顔を埋めた。
「これ、姫ちゃんの香りする…」
隣に座り直したあたしの方へ、マフラ
ーをかざしてくる。
それがどういう意味なのか分からなく
て首を傾げると、「マフラー一緒に巻
こっか?」と彼が言った。
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