‐白雪姫と悪魔なアイツ‐
お礼を言いながらもう一度姫ちゃんの
匂いに体全部が包まる。
「風邪引いちゃ困るから家入れよ」
これ以上姫ちゃんが近くにいれば、き
っとむちゃくちゃに抱き締めてしまう
怖い思いはさせたくない。
ポンッと肩を叩くと、姫ちゃんは少し
前によろめきながら玄関のドアを開け
て顔だけヒョッコリと覗かせた。
「薫くんは信じられそう」
満面な笑みを見せてパタンとドアを閉
めた。
「おやすみ」
光の灯った部屋を見つめて、俺の声は
宙を舞って消えた。
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