‐白雪姫と悪魔なアイツ‐



 体を片手で抱えられて全身でジタバタ
 と反抗しているときだった。



 「ぐあッ」



 中年親父の突然出した苦しそうな声に
 あたしは視線を上げる。



 「大丈夫??」



 中年親父と倒れかけたあたしの体を軽
 々と抱き留めて、心配そうに覗き込ん
 でくるあたしの救世主。



 ドキンと胸が鳴ったような気がした。



 尻餅をついたときに汚れたスカートを
 パタパタと優しく叩いてくれて、おま
 けに髪の毛まで整えてくれる。



 「あの、もう大丈夫ですからッ」

 「そ??」



 戸惑いがちに言うと、彼は目尻を下げ
 て笑う。



 さっきから胸がなんだか五月蝿い。



 「君誰よ〜??」



 さっきまで車の側に倒れていた中年親
 父が救世主に言うと、救世主はあたし
 の体を引き寄せると言う。



 「俺の女に二度と手出すんじゃねーぞ!!」



 さっきまでの天使の微笑みは何処へ。



 目尻はつり上がり高級車を蹴飛ばすと
 中年親父は泣きながら逃げていった。



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