‐白雪姫と悪魔なアイツ‐
「七瀬…薫かあ」
自室のベッドに寝ころびながら、携帯
に表示されている名前にため息を吐く。
未だ胸の鼓動は止まることを知らない
あれから彼は壁に寄せられていた自転
車に乗ってどこかへ行ってしまった。
着ていた制服はあたしと同じだった。
だからきっと同じ学校なんだけど、名
前以外何一つ聞けなかったから、年齢
さえも分からない。
……見るからに彼は不良だった。
一見遊んでいる風に見えるのは髪の色
とだらしなく着こなす制服。
とにかく顔はとても綺麗で、長い前髪
から覗く瞳は茶色くて吸い込まれそう。
鼻筋は通っていて薄くて赤い唇。
一瞬会話を交わしただけで今でも賢明
に思い出せる彼の姿形。
一体どうしちゃったんだろう、あたし。
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