時間屋
「あー…寒ッ」
時間屋に入るなり、俺は体を震わせる。
傘をさしてたのに、走って来たからか、雨がはねてびしょびしょだった。
「よぉー、空雅!遅かったな」
「梶先輩」
タオルを肩にかけ近づいて来たのは、梶 壱夜(かじ いちや)先輩。
俺に、時間屋の仕事を叩き込んでくれた人。
「梶先輩も濡れてますね」
差し出されたタオルで頭をゴシゴシ拭きながら、梶先輩の濡れた茶髪を見る。
「昨日、仕事で傘壊しちまってさ。最悪」
買えばいいのに。
…とか思ったけど、口には出さずに飲み込んだ。
「華子さんは?」
俺の問いに、梶先輩はああ、と返事をする。
「奥にいる。空雅、仕事登録か?」
「そうっすけど…え、梶先輩は?」
梶先輩はニヤリと笑う。
「俺はもうしたもんねー♪これから出る。お先、空雅!」
「早ッ!いーですよ、俺もすぐ行きますから」
梶先輩が手のひらをヒラヒラと振って出ていくのを見届けた俺は、奥の部屋へと足を進める。