時間屋

「うそ…!」


一気に話し終えると、志乃はそう言った。


「会えなかったの!?」


「…そ。しかも、聞いたんだ。名前」


何々?と身を乗り出してくる志乃に、俺はしばらく間をあけてから答えた。



「………風雅」



志乃は、口をぽかんと開ける。


…そう、あの時間屋の名前は、"風雅"。


「名字は名乗ってなかったらしくて、わかんなかったけど」


「空雅くん…その人って…」


俺は苦笑した。


確信は、ない。


でも、おそらくあのひとは…俺の父親。



あのひとの名前を聞いた時、何故だか嬉しかった。


これも何かの縁だと思ったんだ。


「…何か、すごいね」


志乃がぽつりとそう呟いたので、俺も同意した。


「改めて考えると、俺は時間屋になる運命だったのかなって思う」


「絶対そうだよねっ!」


…根拠ないんだけど。


久しぶりに過去を話したことで、気分が軽くなった俺は、夜がふけるまで、志乃と話し込んでいた。





そう、これが間違いだったんだ。





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