時間屋
「それで、志乃お嬢様がどうしたんです?今、地下にいますよ?」
「お、お嬢様を渡せと…旦那様に…」
俺はそれを聞いて、すぐさま外へ出た。
外には、人が溢れかえっていた。
この家の家政婦やら、住み込みのアルバイトやらはみんな手首を縛られていて、おそらく中川財閥であろうたくさんの人物に監視されていた。
「くそっ…」
舌打ちをする俺の目に、広い庭の中央の光景が目に入ってきた。
胸ぐらをつかまれ、地面に押し倒されている北条。
逆に北条を押し倒し、不気味な笑みを浮かべている、一人の男。
二人の会話が、耳に飛び込んでくる。
「北条さーん…。いい加減、教えてくれませんかねぇ?」
「だから、教えるわけがないと言っとるだろう!」
北条は必死に抵抗するが、相手の男は全く動じない。
まるで、大人と赤子のようだった。
「いい加減にして下さいよ?俺は、あんま気が長い方じゃないんでね」
月明かりに照らされ、男の手のナイフがキラリと光る。
男はそれを、北条の喉元に突きつけた。